就活生は有価証券報告書を読むと幸せになれる

この記事について

たいていの企業が公表している有価証券報告書は就活生にとっても有用ですが、取っ付きにくさから活用している学生は少数。本記事では、「有報のココだけ押さえておけば大丈夫!」「有報を使った企業研究のメリット」の2つをご紹介します。

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目次

有価証券報告書とは?

有価証券報告書について

有価証券報告書(以下、有報)とは、その名の通り「有価証券を発行している会社」に提出義務がある書類を指します。
証券取引所に上場している会社や有価証券届出書の提出会社などに対し、金融商品取引法という法律によって提出が義務付けられています。
裏を返せば一握りの企業は提出義務がないことになりますが、新卒就活で出会う大抵の企業はインターネット上でこれを公表しています。
企業は採用サイト等では良い情報だけを流布しますが、有報には生のデータがこれでもかと掲載されています。
もちろん、全てをありのまま信じていいという訳ではありませんが、客観的に企業について知るならば最も効率的な手段です!

通期報告書を複数年度分読むべし

有報は、四半期ごとに1回公開されます。
年度末以外の報告書は一部記載が省略されているため、読むならば過年度の通期報告書(決算期末に公表)にしましょう!
また、一年分だけでは情報量が不足する場合があります。
企業を取り巻く経済状況は毎年変化するものですから、単年度の内容だけ見て一喜一憂するのはあまり意味がないということですね。
時間に余裕があれば、少し前の有報にも目を通して事業環境の変化などを学びましょう。

有価証券報告書を使うメリット

様式が一定

有報の優れた点は、企業ごとに様式がバラバラの決算報告資料や採用コンテンツとは異なり、一定の様式に基づいて公開する必要がある点にあります!
1度読み方を覚えてしまえば、あらゆる企業について効率的に実態を把握することができます

「逆質問」でクソ質問をしなくて済む

「御社の将来性は…」「御社の抱えるリスクにはどのようなものが…」
このような、「それを聞いてどうするの?将来性がないって答えたらウチには来ないの?」と採用担当者には思われてしまう、でも就活生が気になってしまう事柄が有報には記載されています。
また、仮にこういった質問を面接の場で行った場合、面接官のバイアスがかかった回答が返ってくる可能性もあります。
有報には客観的事実が掲載されていますから、より信ずるに足る情報を得ることができます!
さらに、あらかじめ有報を読むことで企業知識を深めることができ、より踏み込んだ逆質問を考える手助けにもなります。

企業理解で他の就活生に差をつけられる

会社説明会で紹介された事柄だけをなぞった就活生は、採用担当者の心に響く発言をすることができません。
事業について様々な側面から理解することで、そういったウワベ就活生とあなたの差別化が可能です。

有価証券報告書で目を通すべきコンテンツ

例として、「京セラ株式会社」の2019年3月期末有価証券報告書の画像をあげながらご説明します!
有報は目次がありますから、そちらを参考に以下の情報を追ってみることから始めましょう!

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

経営方針は、その企業が終局的に目指す姿を凝縮したものになっていることが大抵でしょう。
人材採用も需要と供給のバランスで成り立っていますから、「経営方針を実現するために求められる人材」を逆算し企業とのマッチングをより高めることで、採用される可能性を高めることができます。
また、ここには、経営方針実現のために企業が目下取り組む事業が併せて記載されますから、「入社後携わってみたい仕事」という鉄板質問に対しても備えることができるでしょう。
関連記事関連記事「志望動機」は中長期経営計画から逆算しよう読む
有価証券報告書から志望動機を組み立てる方法については、上記の記事の内容を敷衍して適用することで上手くいく事でしょう。
合わせて読むことをオススメします!

従業員の状況

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連結会社および提出会社について、それぞれの情報が記載されています。
連結会社情報は子会社を含むデータ、提出会社は有報を提出した企業本体の情報ですね。
こちらのセグメントには就活生が大好きな平均年齢や勤続年数、年間給与などが掲載されています!
一方、年間給与をはじめ、これらの情報が参考にならないことが往々としてあります

管理職抜きの場合

たとえば脚注に「管理監督の立場にあるものを含まない」と書いてあった場合、課長や部長など管理職の年収が年間給与の算定から弾かれています。
その結果、必然的に年収が低く算出されるということですね。
表立って高給取りをアピールできない電気・ガス業界に属する企業が特にやりがちな手です。

現業社員を含む場合

さらに、従業員数に現業社員(高卒など)が含まれる場合も有り、純粋に総合職のデータになっていない可能性もあります!
こちらも年収が低く算出される結果につながります。
特にメーカーの場合は要注意!

持株会社の場合

持株会社の場合もこちらのデータは何の参考にもなりません
一般社員は持株会社の傘下に位置する事業会社に所属するため、持株会社には重役だけが在籍します。
その結果、年間給与が跳ね上がるということですね!
…セグメントの悪口を言い過ぎましたが、たとえばセグメント別の従業員数を把握したい際には有用です。
配属希望先の人数規模を知ることで、配属可能性があるかどうかが分かりますからね!

事業等のリスク

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たとえば海外売上比率が高い企業の場合、為替リスクなどに大きな影響を受けることが予想されます。
そういった事業活動継続に対する懸念すべき外的要因が複数掲載されているセグメントになります。
長く勤められる就職先を選ぶ上では、会社がどのようなリスクを抱えているか俯瞰的に知ることが非常に大切です。
就活生はまだまだ社会情勢に疎い側面がどうしてもありますから、企業が公表している情報でまずは勉強しましょう!

研究開発活動

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企業が存続していくためには、より良い価値を社会に提供することが必要不可欠であり、そのためには研究開発が非常に重要になります。
このセグメントでは、企業活動の発展のために、その会社がどのような研究を、どのような規模で行っているかということを具体的に知ることができます。
研究開発内容に加え、研究開発費用も掲載されていますから、技術を大切にする会社かどうかを測る物差しになりますね!
とくに製造業においては中国メーカーの台頭著しく、他社と明確に差別化できる技術がなければ衰退の一途を辿ります。
絶対チェックしておくべきセグメントです!

まずは第一志望だけでも試してみよう

有価証券報告書には、他に財務諸表などのデータが含まれます。
どうしても文章量が多くなってしまう資料であり、見た目鮮やかな採用サイトと違って地味なので就活生には敬遠されがちです。
しかし、先に説明したように、これを抜いて就活することはあまりにも戦略的にマズいと言わざるを得ません!
また、裏を返せば、他の就活生も有報を確認せず選考に挑んでいる可能性がありますから、企業知識量で差を付けるチャンスにもなりえます。
有報に記載されている情報のうち就職活動のために絶対知っておくべき情報は、今回の記事で説明したように限定的です。
だからこそ、苦手意識を持たずにまずは第一志望だけでもいいので読んでみましょう

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